6th STEP 虹の約束 

 左:虹 右:1歳の頃  

 長女は、長男が2歳半のとき、生まれました。

 出産のための入院は、約2ヶ月。

 兄妹3人の中で一番大きく生まれた彼女は、生まれた直後肝臓肥大が疑われ、初めての面会は5、6時間もたってからでした。長男のことがあったので、主人は「また…」と思い、かなりかまえていたようです。
 しかし、窮拍症候群で人工呼吸器のお世話になるものの、3人の中では一番短い保育器生活で、彼女は私たちの家に帰ってきました。

 彼女の出生直後から、長男の足の治療が忙しくなっていました。

 赤ん坊として彼女を世話するのですが、兄に手がかかるためどうしても時間的にそれ以上のことを彼女にできなかったというのが、実際のところでした。彼女はとても食が細い(割にはとてもふくよかだったのですが…)以外は、首のすわりも、寝返りも、お座りも、たっちも歩き始めも、みんな少し早いくらい順調でした。

 長男のことだけではありませんでした。
 私自身、神さまに従っていくということに、必死でした。うまくやっていたのではありません。失敗と、そこからくる自分への責めと後悔、立ち直りたい願いと限界の葛藤…、いつも心がそこに釘付けでした。毎日どこかで礼拝か集会があり、それをこなしていくため、移動の車の中で多くの時間が過ぎ去りました。

 そんな中で、長女はどんどん大きくなっていきました。
 気がついたら、1歳になって、保育園に通い始めていて、そして2歳になっていました。

 保育園での1年が過ぎて、最後の父母会のときでした。

 スケジュールの都合で、各期に1回ある父母会に出たのは、それが初めてでした。
 そこで私はビックリしたのです。その保育園の父母会とは、父兄が保育士さんから言いたい放題、家庭でのしつけのなさ、いかに子ども達の行儀が悪いか、いうことを聞かないかを延々と叱られる(!)そういう父母会だったのです。

 長女はとてもとても内弁慶な子です。

 家の中では、長男に輪をかけて明るく、ひょうきんな子です。歌って踊って、よく笑って。でも一歩外に出ると、私のかげに隠れて、愛想笑いもしない、誰に抱っこされることも嫌がる、こわがりな子でした。

 保育園では、いつも泣いていました。私を見ると飛んできました。その保育園で笑って楽しそうにしている姿は、あまり見ませんでした。

 それでも、その日の集会のため、長男の検査のため、彼女を預けました。
 送っていった時、泣かずにおもちゃのところに行けば、「ああ、よかった…」と安心していました。それで1年が過ぎたのです。

 …延々と愚痴を聞きながら、私ひとりきょろきょろしていました(みんな慣れている、という感じでした…)。みんな、そこまで言われる筋合いないじゃないか、きっと大事に育ててるはず、親だもの…。…そう考えて、ふと、私はホントに「親」らしかっただろうか、そう思ったのです。

 そういえば私は、彼女の心を、時間をかけて見つめたことがほとんどなかった…、あの子はここでどんなふうに扱われていたのだろう、つらかったのか、楽しかったのか、我慢していたのか、あの子の好きな遊びはなんだったのか…。

 帰り、抱きしめて、ぽろぽろ涙が出ました。ショックでした。

 何度も「ゴメンね」と、「大好き、ママの娘」を繰り返しました。
 私は、その日、やっと、長女にとって「母親」になったんだと思います。

 すっと、子どもたち3人の中で、長女の涙が私の心を一番責めるものでした。長男の病院のため幼稚園の延長クラスに預けたときも、次女の出産のとき運動会に行けなくてすみっこで泣いてたときも、長女の泣き顔が一番私にとってこたえるのです。

 保育園1歳児クラスの時の記憶が、負い目になっているのだと思います。

 今回、長女のことを書くことを神さまに導かれたと感じていました。
 でも、書けば書くほど、「暗い」のです。切なくて、つらいのです。

 でもわかりました。ここを越えていかなければ、本当の意味で、長女のこと、大事に育ててはいけない。負い目をもったまま、あの子を本当に愛してあげられない。支える前に、私がくじけてしまうから。…一つ一つ感謝しました。心に針みたいに刺さっているあの子のいくつもの泣き顔を一つ一つ思い出して。

 氷が解けるみたい、とはこういうことかと思うほどでした。
 切なさが、いとしい気持ちに変わりました。

 「虹の約束」という賛美を思い出しました。
 歌詞をたどると涙があふれて神さまの優しさに触れました。

   強く おおしくあれ イエスが共にいるから
   祈り聞き従い 主のことば信じ続けよう
   変わることのないあなたの 虹の約束をつかもう
   主が語られたことだから 必ず それができるから
   …

 長女は、「虹の約束」、私たちにとって、祝福の約束、それを思い出しました。

 神さまに感謝します。