25th STEP 運動会
左 ダンス! 右 疲れのあまり笑いがひきつる…
長男は、手術の後装具を24時間つけたままで1年生が始まりました。
実際、アキレス腱を切っているので、足の筋肉がおちた状態、装具無しにはふにゃ…となって歩けないのです。
そして1年生の5月、いきなり運動会の練習が始まったのです。
あと運動会も10日ほどというある日、私は学校の保健室から電話をもらいました。
長男が具合が悪くて寝ているので引取りに来てください、とのこと。私はびっくりして学校に向かいました。
ベッドの上でどんよりした顔で寝ている姿を想像して部屋に入ったのですが、なんと彼は歩きながらやはり保健室にいるほかの子たちと遊んでいるのです!! いったい、どうなっているの?
保健室の先生の話では、運動会の練習が暑くて厳しいので疲れたのではといいます。が、そこには元気に遊ぶ長男…。
そして担任の先生も来ました。長男のランドセルと手さげを持って、「今日は疲れがひどくて足が痛いとのこと。帰ったほうがいいかと思います。どうせ今日はこれから運動会の練習しかないので」
は? どういうことでしょうか。運動会の練習はしなくていいと…?
「彼は足が痛いと自分で言うので、玉入れだけ出ることにしました。あとは見学ということで、今のところ練習のときはずっと保健室にいますし」
…帰ってからゆっくりと話を聞くと、長男は体操も、ダンスも、徒競走も、リレーも、綱引きも出ない。玉入れだけ保健室から参加する、そういうことになっているんだと。
私は聞きました。「それでいいの?」
それでいいの? …そんな運動会つまんないよ? 足痛いって、半分うそでしょう? 本当はがんばれるんでしょう?
長男は答えました。「だって、暑くてつらいし、僕は走っても遅いんだもん」
それで、いいの?
運動会って、毎年あるんだよ。そのたびに保健室に逃げるの? そして、あーあ、つまんないなーって、見てるの? 暑いのはみんな同じだよ。足が痛い君も、痛くない子もみんな暑くてつらい。
それに走るのが苦手な子も、上手な子もいる。でも走るのが苦手な子は、作文が上手かもしれないでしょ。走るのが速い子も、作文の発表のときは「もういやだー」って思っているかも。どうしても歌を歌いたくないかも。
みんなそれぞれ強いところも弱いところもある。運動会でヒーローになる子もいれば、音楽の発表でヒーローになる子もいるし、作文読んだらヒーローって子もいる。
好きなことだけやっていくの? 苦手なことはやめる? それはとてもつまらないことだよ。逃げちゃだめ。一回逃げたら、また逃げたくなるよ。まだ、1年生は始まったばかりなのに。
黙った聞いていた長男。あきらかに葛藤しています。
ママの言うことはわかる。でもつらいんだもの…。
…一緒に祈りました。
神さま、足痛いって嘘の言い訳してごめんなさい。
運動会、楽しくなりますように。そして全部のもの、出る勇気と力をください…。
次の日から、長男は先生に自分から言ったそうです。「僕、ダンスの練習もやる」
さて、運動会当日。
みんなと一緒に、装具の足でがんばって行進する長男。体操はとてもずれてたけど表情は真剣。
全学年での紅白対抗大玉ころがし。端っこのほうでエキサイトしている後姿。
さあ、ダンス!「タフワフワイ」というハワイアンにのって腰みのつけて一生懸命踊りました。途中からの練習で、振り付けがところどころわからなかったみたいだけれど、ママはじわーっときながらも、必死でデジカメ片手に見つめました。
そして徒競走。
長男が出るとは思わなかったのです。でも友達のママから長男も並んでいると。
ゴールでどきどきしながら待ちました。
装具をつけた足が土をけってかけてくる。両手を一生懸命振って、走っている!
ゴール! …一番最後だったけど、僅差。
…勢いあまってゴールの後派手に転んでしまったね。
涙が出たよ。本当に感動したんだよ。
…出てくれてありがとう。本当にありがとう…。よくやったよ。がんばったよ。
結局、その後の縦割りリレーも綱引きも含めて、長男はすべての種目に友達と同じように出たのです。白組の勝ちという成果も得て。
帰り道、感想を聞いても答えられないほど、疲れていました。
ごほうびのアイスを食べながら、「でもね、楽しかったよ」
運動会の2ヵ月後、長男は転校してしまいました。
そして転校したての9月、またも運動会の練習に突入するのでした…。
しかし長男は自信ありげに言ったのです。「もう1回運動会できるんだ! 今度も白だ。また勝つぞ!」