19th STEP  家出

 左;幼稚園の筆者と弟 右;おばあちゃんとまご(長男)   

 子供のころの遠い記憶の中で、印象に残った場面があります。

 夕方、いつもの近所の食料品屋さん。
 おつかいを頼まれても、たいてい家からそこまでなら勝手知ったる道。…でも私は意を決してその先まで足を伸ばしたのです。夕暮れがいつもより心細く感じる。…でも1区画行かない前に、もう帰ろうかな、でも今帰ったら私の「決意」はどうなる、…帰ろうかな、きっとお母さんも後悔しているんじゃないのかな、もっと話を聞いてあげればよかったって。…心配したかな、きっとしたよね…。

 そうして、私の「家出」は、いつもの店からほんの数メートル先で終わるのです!

 最近、兄妹げんかがひどくなると決まってこういいます。

 「こらーっ、お外で頭冷やしてきなさいーっ!(たいていかなりの怒鳴り声…。近所迷惑でしょうね…、反省。)」
 そうやって玄関先でしばらく反省してもらうのです。うちの玄関先は、我が家の人しか来ない奥まったところにあるので、安心して(?)立ちんぼうさせられるのです。しぶしぶ外に出ると、いつも子供たちのこそこそ声。…「イエスさま、けんかしてごめんなさい、ぶっちゃってごめんなさい…。…さむいねえー…」

 しばらくして、「入ってきなさい」と言うと、小さい声で「ごめんなさい…」と言いながら入ってきます。

 でもこれは割りと「平和的」なパターンであって、子供も反抗的に出てくるときは、もう「大戦争」です。

 「外いきなさーい!」

 長男の場合は、何も言わないけれど、明らかにふてくされたまま、玄関に向かい、のろのろ靴を履くのです。明らかに葛藤が見えます。ごめんなさい言って、出てかなくてもいいようにしてもらおうか、でもやっぱりなんか悔しい。そしてのろのろ外に出て、台所の窓下あたりから玄関までを往復し続けるのです。そのうち、窓の下から、「ごめんね…」と小さい声。

 しかし!!

 本当に大変なのは「長女との決戦」なのです!
 この長女は本当につわもの。ごうじょっぱり(親に似て)なのです。

 外出てなさい! と言うと、「うん、外行く」と、何事もなかったかのようにうなずいて、さっさと出て行ってしまう。それで、なかなか「ね」を上げない。…そのうち、私のほうが心配になって、

「ちょっと入ってきなさい」
「どーう? わかった? ごめんなさい言う? それともまた外へ行く? どうする?」

 すると、なんと「外行く」と、さっさと靴を履いて出て行ってしまう…!
 こちらが呆気に取られます。…おそるべき4歳!!

 …それからまた根くらべですが、やっぱり折れてしまうのは私。「…入ってきなさい!」
 それで、もう無理やり誘導尋問(笑)。「ね、外寒いでしょ、もう行きたくないでしょ。ほんとはごめんねって言おうと思ってたんでしょ。ごめんねって言ったらもう赦してもらってたはずなのになー(必死な誘導…)」

 それで「…うん、ごめんなさああああーん。(泣)」…よしよし、それでこそ4歳!

 今から考えると、私の親も、私のことを「手に負えない」と思っていたのかも(笑)。

 長女の強情も、私にとっていつか来た道なのかも。
 なのに、主人にはいつも、「もう信じらんないのよ、あの子って今日ねー…」と報告するのです。…「棚上げ」もいいところ。大人になると、成長過程での山・谷を忘れがちなんですね。

 本当は強情張っているときの長女の気持ち、わからなくもない。
 でも、親になって始めてわかったこともあります。

 玄関先であろうが、いつものお店の数メートル先までであろうが、やっぱり心配。…「家出」から帰ったとき、いつも母は怒っていました。…その「怒り」の訳が少しわかった気がするのです。

 もう少し大きくなったら、「家出」という手段をとりそうな性格の長女。この子を含め3人にお願いがあるのです。
 ぜひ家出は5時まで、校区内でお願いします…。