16th STEP  僕はどうしてこんなに弱虫なんだろう… 【後編】

 左;幼稚園のクリスマス 右;お楽しみ会   

 長男のギプスは、太ももからの長いものからひざ下になり、やがて昼間だけは装具をつけてリハビリをするようにどんどん回復しました。そして、2月半ば、とうとう退院したのです。

 長男が入院する直前のことです。
 幼稚園であることが起きていました。長男が仲間はずれにあっていたのです。

 理由は、長男がお集まりの時やみんなで行動するときに、協力しない、ちゃんと集まらない、そういうところから始まったものでした。それまでも、何度もそういうことについては長男に「ちゃんとやるべきだ」と話していました。しかし1人でうろうろ…がおさまらなかったのです。

 好奇心や衝動を抑えられない、そういう性格のせいでしょう。でも別の気持ちもあったと思うのです。
 長男は叱られたり友達に拒絶されたりすると、よく「僕はどうせ」と言いました。幼稚園の年長になってその傾向は強くなり、僕はどうせできない、ダメなんだ、僕はかわいそうなんだ…、甘え半分「すね」半分、そういう気持ちになってしまっていたんだと思うのです。

 人より着替えが遅いから、がんばるより助けてもらうのを待っていました。ちょっとしたことを先生に言いつけ、解決してもらおうとしました。トイレや支度が遅くても、しょうがないんだ、僕は悪いんじゃない…、そういう感じで回りに甘えていたんだと思うのです。

 幼稚園はキリスト教の園で、先生たちも神さまを信じていて長男に親身になってくれていました。
 先生達はクラスのお集まりの時、言ってくれたのです。

 「このままでいいの? このままでS君(長男)が入院してもいいの? またここに戻ってきたい! と思ってくれるようになって、おくりだしてあげようよ」
 みんなも仲間はずれにしない、長男もちゃんとみんなに迷惑かけないようにがんばる、そう約束をしたそうです。

 入院中の外泊時にクリスマスページェントがあり、幼稚園に顔を出しました。
 車椅子を押しながら園庭に入ったとき、みんなその姿に驚いたようで、集まってくれてもただ見てるだけ…、という感じでした。長男も極度の寝不足で話しもできず笑うこともなく…、それが余計に痛々しく映ったのでしょう。

 その次、お楽しみ会に参加したときは、長男の周りに集まっておそるおそる「…だいじょうぶ?」と話しかけてくれたり、長男にあてて書いておいてくれた励ましの手紙を渡してくれたりしました。

 実は先生たちが、私が長女のお迎えのたびに報告していた長男の様子を、毎朝のようにクラスで報告してくれていたのです。長男がどんな痛みに耐え、泣きながらもがんばっている様子を、毎日伝えてくれていたのです。

 退院して、2週間は外用の装具の完成待ちと入院の後遺症で家でもぐったりしたままで幼稚園には行けませんでした。

 「来週から幼稚園だよ」
 そう言っても、長男はあまり喜びませんでした。…入院前の仲間はずれと、入院のブランクから、友達に会うのがこわくなってしまっていたようでした。

 幼稚園再開のその日。

 「おはよう!」 「あっ、Sだー!!」
 登園した長男のところに、クラスのみんながわっと集まってきて、長男はみんなにもみくちゃにされながら部屋に入っていきました。…その姿を見て涙が出ました。

 帰り道、長男は本当にうれしそうに笑って報告してくれました。「ママ、僕人気者だったよー!」久しぶりにいい笑顔でした。
 私は長男に言いました。
 「先生がね、入院の様子をずっとみんなに話しててくれてたんだって。…きっとみんな、あなたががんばってる姿、わかってくれたんじゃないのかなー。つらかったけど、これは神さまのごほうびだとママは思うよ」

 本当に思うんだよ。みんなは君ががんばっている姿に、きっと感動してくれたに違いない、と。
 …弱虫だって、泣いたね。でも不思議だね。今はそれがきみの「強さ」になっている…。

 私自身、過ぎた3ヶ月ほどの間長男の病院から次女の病院、長女の幼稚園へと飛び回った毎日、気持ちがあんなにへこたれてたのに、からだは少しも休まず動き続けていた事実に気がついて、不思議な感覚でした。

 それから今に至るまで、どんどんとその入院が私の中で恵みに変わっていっているのです。

 長男長女は入院前の2人を知る人たちによく言われます。「すごいおにいちゃん、おねえちゃんになったねー。ビックリするほど落ち着きが出てきた!」と。(…え、これで?と思うのは私だけでしょうか…)

 神さまは本当にすばらしい「短期集中訓練」を与えてくださったようです!
 長男の足そのものも、半年は装具をつけましたが、今は念願の自転車も上手にこぐことができ、なわ跳びの練習にもトライしているほど(というか宿題なのですが…)。いろんなことに自信をつけて、やってみよう! という気力も強くなってきて、自己憐憫と甘えはかなり減りました。

 また教会のゴスペルチームとして初めて立った舞台は、小児科の入院病棟のクリスマス会でした。長男と同じように表情に乏しくなった長期入院の子供たち、そしてそれを支える家族の方々の前で、神さまの愛を語り賛美をささげたのです。

 そしてもっともっと、「すべては益となる」のです! 苦しければ苦しいほど、つらければつらいほど、そうなるのです。そう信じているのです。

 …長男の卒園記念文集には、「どんな子?」のところに、長男はこう書かれていました。

 『がんばりや』
 神さまの道の上では、一番弱いところも、きっと強さになる。
 信じて、感謝して、歩んでいけば…!!