デボラの海外宣教の思い出
<連載8> 銭湯に行った


私たちが泊っていた宿舎はアパートを借りていたもので、お湯が出ませんでした。

ある日、イリエさんは私たちを銭湯に連れて行きました。ルーマニアに銭湯?と思われるかもしれませんが、当時はお湯が出ないので多くの人たちは銭湯を利用していたのです。

行ってみると予約をしていなければ個室のシャワー室やバスタブ付きのシャワー室は使えず、私たちは、どうした事か、大衆浴場に入ることになってしまったのです。アメリカ人のパムさんと日本の何人かの姉妹たちは、たくさんの人たちが利用している中に入って行ったのです。

シャワーがたくさん取り付けてあり、サウナもひな段のように、天井から下まで階段のような所におばあさんたちが腰掛けていました。私は最初にサウナに行って見たらにおい(バターやチーズを食べているので)が鼻に来て、これは無理だと思って皆に言うと、1人の姉妹が「行きたい」と言ったので行ってみると、その姉妹は「くさい」と言っていやな顔をしたので、私は、ルーマニアの人たちを傷付けたくなかったので、顔をタオルでおさえて鼻をつまむようにと言いました。パムさんはと見ると、青い目を大きく見開いてパニックになっているようでした。それでルーマニアのおばあさんたちが歓迎してくれたのですが、私たちはそこから逃げ出しました。私は「バイバイー」と手を振ってお別れしました。

おばあさんたちは、突然日本人たちが入って来て、すぐ去って行ったのでびっくりしたのではないかと思いました。

それから、私たちは滝のようなシャワーをあびて、となりの人と片言の英語で交わりをもち、やっとの思いで上がって来ました。

私たちは、生まれて初めてのルーマニア銭湯を体験して興奮して、笑いころげていました。思い出すと一人一人の対応がおもしろかったからでした。

迎えの車を待っていると、ひとりのおばあさんが手のひらの上で小銭を数えて何か言っています。そして、私たちにペプシコーラを1本買ってくれたのです。「皆に買ってやれないヨ〜」と言っていたようでした。私はとても嬉しくて感謝すると、そのおばあさんは、私を抱きしめて、ほっぺにチュとしてくれました。もちろん私もお返しをしました。なぜなら、私も子供たちを抱きしめてチュとしてやっていたので、慣れていたからです。

チームの元にもどると、このあかしは大うけしてしまいました。そして、私たちは行かなかった姉妹たちにこの異文化を体験すべきだとすすめたのです。これを体験しなければ宣教師にはなれない(!?)と・・・・・。すると2人の姉妹はことわりましたが、1人の姉妹はまじめに受け取って「行く」と言いました。でも1人で行かせるのはかわいそうに思い、私も一緒に行ってあげると言いました。そして本気で入る決心をして、出かけたのです。

ところが、水曜日で銭湯はお休みで異文化体験はまぬがれてしまいました。

しかし、神様はこの姉妹の心を見ておられました。この姉妹は、この派遣の終わったのちにルーマニアの孤児院での奉仕者として(祈りの奉仕者として)遣わされたのですから驚きです。

今、姉妹は長老牧師夫人として、主に仕えています。そして、このおばあさんの愛を神様は覚えてくださって報い返して下さったにちがいないと思います。

ルーマニアでの良き思い出の一つです。